株式会社 秀電社

福岡市の水源戦略:地理的制約を乗り越える持続可能な水資源管理 2024年11月28日 木曜日

◉水資源に挑む福岡市の知恵


私たち秀電社は福岡市の水処理施設の工事もお任せいただいています。施設内の電気工事や機械設置工事など内容は多岐に渡りますが、ライフラインでもある水を処理する施設(上下水道、送水、処理等)では特に高い技術力が求められます。そこで今回は、福岡市の意外と知られていない「水事情」に関するお話を少々。

皆さん、こんにちは。SHUDEN,ON TIMEです。

福岡市は地理的に水資源に恵まれていない都市と言われ、水源の確保と多様なアプローチに基づいて水供給を実現しています。40代以上の方は記憶に残っているかもしれませんが、福岡市は過去に幾度となく渇水に見舞われてきました。特に1978年と1994年の大渇水は、市民生活や経済活動に大きな影響を与え、水資源の重要性を痛感させられる出来事でした。これらの経験から、福岡市は水不足への備えを強化し、多角的な水源確保や節水対策を進めてきました。

◉福岡市の水源構成


福岡市は9つのダムを活用し、水源の多様性と安定性を同時に実現しており、その中で「水源構成」は3つの主要な柱から成り立っています。

1. ダム水源(37.6%)

9つのダムから取水し、総利水容量約7,835万立方メートルを確保。水道専用ダムと水道のほかに治水や灌漑なども目的とする多目的ダムをバランス良く活用することで、水源の多様性と安定性を実現しています。取水内訳は、水道専用ダムが曲渕、脊振、久原、長谷の4つのダム、多目的ダムは南畑、五ケ山、江川、瑞梅寺、猪野の5つのダムです。皆さんも行ったことがある、または聞いたことがあるというダムもあるのではないでしょうか。

2. 近郊河川(29.3%)

近郊の河川は小規模ながらもかけがえのない水源です。多々良川、御笠川、那珂川、室見川といった地域の河川を効果的に活用し、水源確保だけでなく、流域管理など地域のエコシステムとの共生を重視しています。

3. 筑後川からの受水(33.1%)

福岡地区水道企業団を通じて、広域的な水利権を確保しています。九州最大の河川「筑後川」は、4県にまたがる重要な水源で、福岡市は昭和58年から、筑後大堰で取水された水を大野城市にある牛頸浄水場まで送水し、水道用水として活用(※)。効率的な水資源管理を可能にしています。

※福岡導水

筑後川の水をポンプで汲み上げ大きなパイプの中を通し、6時間かけ牛頸浄水場まで送水。パイプの長さは約25km。

ちなみに、国連開発計画(UNDP)が発表した「Human Development Report 2006」によると、農業、 工業、エネルギー及び環境に要する水資源量は、一般的に、年間一人当たり 1,700m3とされ、 利用可能な水の量が 1,700m3 を下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1,000m3 を下 回る場合は「水不足」の状態、500m3 を下回る場合は「絶対的な水不足」の状態を表すとされています。また、人間が1年間で必要とする水の量は、個人差や生活習慣、気候などによって大きく異なりますが、一般的な目安として

・1人あたり1日の平均的な飲水量: 約2リットル
・1人あたり1日の生活用水量: 約221リットル(入浴、洗濯、調理など)

これらを基に計算すると、1人あたり1年間で約80トン(2リットル/日 x 365日 + 221リットル/日 x 365日)の水が必要になります。

 

 

◉未来への挑戦 – 海水淡水化


さらに、福岡都市圏は「海水淡水化事業」にも取り組んでいます。「海の中道奈多海水淡水化センター」は、福岡市の革新的なアプローチを象徴する施設で、1日最大50,000立方メートルの生産能力を持ち、気象条件に左右されない安定給水を実現しています。

※5年前、秀電社で全体研修に行った記事はこちら。

https://shuden.co.jp/reports/skill-up/3/

福岡市の水源戦略は、単なるインフラ整備ではありません。それは都市の生存戦略であり、未来への投資なのです。多様な水源確保、広域連携、技術イノベーション、そして環境との共生を通じて、都市の持続可能性を追求しています。

 

 

Next 》》 自然と人間の知恵が紡ぐ壮大な水の旅

 


▽「共に働く仲間」積極採用中!

▽秀電社って、どんな会社なの?

▽秀電社が実際に実現していること


  • Page:
  • 1
  • 2

Back Number

Back Number
検 索
カテゴリー
新着情報

PAGE
TOP